ロールコートとディップコートの比較と最適な使い分け基準

塗装工程において、ロールコートとディップコートはいずれも均一な被膜形成を目的としていますが、実際には性能やコスト、形状対応力といった観点で違いがあり、得られる仕上がりも大きく変わります。

それぞれの特性を理解し、最適な使い分けを判断することが、高品質な製品づくりにつながります。

今回はロールコートとディップコートを他工法との違いも交えて比較し、判断基準を整理するとともに、ディップコートを選ぶ際の具体的条件や工程例について解説します。

ロールコートとディップコートの比較と使い分けの基準

ロールコートとディップコートの比較

ロールコートは、精密な膜厚制御を可能にする点が強みです。

ローラーで塗料を安定的に塗布できるため、外観品質や機能性が重視される製品に適しており、大量生産ラインでも効率的に運用できます。

ただし、平面や円筒形といった単純な形状に限られ、凹凸や複雑形状の塗装は苦手です。

設備の初期投資は必要ですが、長期的にはコストを抑えやすい工法といえます。

一方ディップコートは、塗料槽に浸漬することで複雑な形状や細部まで塗料を行き渡らせられるため、被覆性に優れています。

小型部品をまとめて処理する場合にも有効です。

設備は比較的シンプルで導入しやすい一方、膜厚の精密制御は難しく、余剰塗料処理や乾燥工程に手間やコストがかかる場合もあります。

使い分けの基準

このような特徴を踏まえると、次のような使い分けが考えられます。

均一な膜厚や生産効率を優先する場合はロールコート、複雑な形状や被覆性を重視する場合はディップコートを選択します。

さらに塗料の性質によっても選択が分かれ、低粘度塗料にはディップコートが適し、高粘度塗料や厚膜形成を目的とする場合にはロールコートが有効です。

ディップコートを選ぶ条件と具体的工程例

ディップコートを選ぶ条件

ディップコートを選択すべきなのは、部品に凹凸が多く均一な被覆が求められる場合、少量多品種の処理が必要な場合、あるいは薄膜仕上げを狙う場合です。

特に防錆処理や木工装飾などでは、膜厚よりも「全体を確実に覆う」ことが重要になるため、ディップコートの利点が活きます。

ディップコートの具体的工程例

実際の工程では、次の4つの設定が品質を左右します。

ディップコートをする部品を液体に浸しておく時間を一定に保ち、対象物全体に塗料を行き渡らせること、引き上げ速度を調整して膜厚をコントロールすること、塗料の粘度を適切に管理し、厚膜やムラの発生を防ぐこと、余剰塗料を落としたうえで乾燥工程を丁寧に行うことが欠かせません。

例えば、金属部品の防錆塗装では、低粘度塗料を用いて浸漬1分、引き上げ速度50mm/分、120℃で30分乾燥という工程が効果的です。

木製装飾品の場合、中粘度塗料を使用し、浸漬30秒、引き上げ速度100mm/分、その後自然乾燥と仕上げ研磨を組み合わせることで、美しい表面仕上げを実現できます。

まとめ

ロールコートとディップコートは性能・コスト・形状対応の面で明確な違いがあり、製品の条件に応じた適切な使い分けが求められます。

とりわけディップコートは、工程条件を工夫することで多様な仕上がりに対応できる柔軟な工法です。

当社ではディップコーターのレンタルやカスタマイズも承っておりますので、工程設計の段階からお気軽にご相談ください。