リチウムイオン電池の電極や、燃料電池の触媒層の形成。これらには、活物質や導電助剤などの粉体をバインダー(結合材)と混ぜ合わせた、ドロドロとした高濃度の「スラリー」を使用します。 スラリーは通常のコーティング液とは異なり、重い粒子を含み、粘度も極めて高いため、均一な膜厚を得るには特殊なアプローチが求められます。本記事では、スラリー特有の物理的挙動と、ディップコーティングで均一に塗布するための装置選定のポイントを解説します。
1. スラリー塗布における「沈降」と「凝集」のリスク
重い粒子が引き起こす活物質の偏り
スラリー(懸濁液)の最大の特徴は、完全に溶けきっていない固体の粒子(リチウム遷移金属酸化物やカーボンなど)が液中に多数漂っている点です。 時間が経つと、重力によってこれらの重い粒子がタンクの底へと沈み始めます(沈降)。また、粒子同士がくっついて大きな塊になる(凝集)こともあります。この状態で基板をディップしてしまうと、電極の場所によって活物質の量に偏りが出たり、表面がザラザラになったりして、電池の寿命や充放電のパフォーマンスが大きく低下します。
2. 高粘度液特有の「液だれ」と「糸引き」現象
粘度が引き上げ速度の限界を決める
さらに、スラリーは非常に粘度が高く、ドロドロとしています。粘度が高い液体は、ワークを引き上げる際にまとわりつきやすく、分厚い膜になりやすいという性質があります。
もし、薄く均一な電極層を作りたいからといって引き上げ速度を速くしてしまうと、スラリーがワークに過剰に引っ張られ、後からボタボタと垂れ落ちる「液だれ」や、液面から離れる瞬間にネバネバと糸を引く「糸引き」が発生します。高粘度液のコーティングにおいて、引き上げ速度を速くすることは品質低下に直結します。
3. 【解決策】強力なモーター駆動と精密な液管理システム
高負荷に耐えるSDIの堅牢なディップコーター
高粘度で重いスラリーを薄く均一に塗るための絶対条件は、「極めて遅い速度で、力強く引き上げること」です。 しかし、ドロドロの液体から基板を引き抜くには大きな抵抗(負荷)がかかるため、一般的な安価なモーターでは速度がブレたり、止まってしまったりします。
SDIのディップコーターは、高負荷なスラリー液でも決してブレない強力なトルクを持つ駆動機構を搭載しています。どんなに粘度が高くても、設定した超低速(数mm/minなど)を寸分の狂いもなく維持して引き上げ、糸引きや液だれを完全に防ぎます。 また、液の沈降を防ぐための「タンク内撹拌(スターラー)システム」など、電池開発に特化したカスタマイズにも対応しています。
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