撥油性コーティングは、製品の性能や耐久性に直結する重要な技術です。
性能を正しく把握するためには、目的に応じた適切な評価指標を選ぶことが欠かせません。
代表的な指標には、接触角、転落角、摩擦係数といった物理的な測定方法があります。
それぞれが異なる特性を捉えるため、組み合わせて用いることでより精度の高い評価が可能になります。
さらに、ディップコート工程などのプロセス条件と密接に関わるため、材料や装置の設定を考慮した視点も求められます。
今回は、主要な評価指標とその選び方についてご紹介します。
撥油性コーティングを評価する代表的な指標とは
接触角で表面エネルギーを測る方法
接触角は、液滴とコーティング表面がなす角度を測定することで表面エネルギーを評価する方法です。
角度が大きいほど液体が広がりにくく、撥油性が高いことを示します。
測定は専用の接触角測定装置を用い、滴下された液滴の形状から数値を算出します。
簡便で再現性が高く、初期評価や材料スクリーニングに適しています。
転落角で液滴の滑りやすさを確認する方法
転落角は、表面を傾けたときに液滴が滑り始める角度を示します。
接触角が静的な状態を評価するのに対し、転落角は動的な撥油性を把握できる点が特徴です。
小さな角度で液滴が滑り落ちるほど、表面は撥油性に優れていると判断できます。
測定には傾斜角を制御できるステージと観察用のカメラが用いられます。
摩擦係数で動的な撥油性を把握する方法
摩擦係数は、液滴と表面の間に働く摩擦力を定量的に評価する指標です。
摩擦が小さいほど液滴は滑らかに移動し、撥油性が高いことを示します。
測定には、傾斜面上の液滴の移動挙動を利用する方法や専用の測定装置が用いられます。
液滴の種類や粘度、表面の微細構造が結果に影響するため、条件を一定に保つことが重要です。
評価指標を目的に応じて選択するための基準
材料選定や液濃度と接触角の関係
接触角は、基材の材質やコーティング液の濃度によって変化します。
液濃度が高い場合は膜厚が増し、接触角が大きくなる傾向があります。
一方で、材料の表面エネルギーが高ければ液滴は広がりやすく、接触角が小さくなる場合もあります。
材料設計段階では、接触角測定を通じて最適な組み合わせを見極めることが有効です。
引き上げ速度・硬化条件と転落角の影響
ディップコートでの引き上げ速度や硬化条件は、液膜の均一性や密着性に大きく影響します。
速度が速いと膜の厚さにばらつきが生じて液だれが発生してしまい、転落角の値にも変動が出ます。
また、硬化条件が不適切だと表面の平滑性が損なわれ、液滴が滑りにくくなる可能性があります。
プロセス条件を調整することで、転落角を改善し撥油性を高めることができます。
表面清浄度や装置設定と摩擦係数の関係
摩擦係数は、表面の微細な汚れや粗さに大きく左右されます。
洗浄不足や異物付着があると摩擦力が増し、液滴が滑らかに移動しません。
また、装置側の搬送速度や乾燥条件が適切でない場合も摩擦係数が悪化する要因になります。
安定した評価を得るためには、前処理や装置の設定管理を徹底することが不可欠です。
まとめ
撥油性コーティングの評価では、接触角・転落角・摩擦係数といった代表的な指標を組み合わせることが重要です。
接触角で静的な撥油性を確認し、転落角で動的な液滴挙動を捉え、摩擦係数で滑りやすさを数値化することで、より客観的で実用的な評価が可能になります。
また、材料選定や液濃度、ディップコートにおける引き上げ速度や硬化条件、さらには表面清浄度や装置設定といったプロセス条件を考慮することで、目的性能に直結した評価結果が得られます。
当社では、コーティングプロセスと洗浄・搬送技術を組み合わせたライン設計に強みを持ち、治具開発から装置設定までサポートできる体制を有しています。
ご質問等がございましたら、ぜひ一度ご相談ください。
